作成日:2019/07/23
アパートを借りたときやマイホームを購入したときに、不動産会社に仲介手数料を支払った記憶がある方は多くいるのではないでしょうか。それではこの仲介手数料は、自分が不動産の売主である場合にも支払う必要があるのでしょうか。今回はそういった疑問を持つ方のために、そもそも仲介手数料とは何のための費用なのかということや、金額の相場、注意点などを解説していきます。
不動産を売却しようと思ったときに、完全に個人で取引を行うことは難しいだろうし抵抗があるという方は多くいるでしょう。そのような方は不動産会社を通して取引を行うかと思います。仲介手数料とは、そうした個人には難しい不動産の取引をサポートする、具体的には取引相手を見つけて成約を行う手伝いをする不動産会社に対する報酬のことを指します。仲介手数料については宅地建物取引業法によって詳細が決められています。
まず不動産の売買が行われる場合については、不動産会社は定められた上限額を超えない範囲で、不動産の買主と売主の両方から仲介手数料を受け取ることができるとされています。また不動産の賃貸が行われる場合には、貸主借主が支払う手数料の合計が「家賃1カ月分+消費税」と決められています。つまり、冒頭で触れた疑問の答えとしては、不動産の売主も仲介手数料を請求されるということになります。
仲介手数料は不動産会社による取引のサポートに対する報酬であるということはすでに説明しましたが、具体的にはどのような業務が仲介手数料の対象となっているのでしょうか。
まず最初に挙げられるのは、売買のための営業活動です。例えば不動産会社は不動産の買主を探すために広告を出したり、買主候補である人に物件の案内をしたりします。このときにかかる広告費、交通費、人件費などが仲介手数料に含まれるというわけです。ちなみに「サポートに対する報酬」と記しましたが、仲介手数料が発生するのは成約がなされてからです。
また仲介手数料に含まれる業務には他にも下記のようなものがあります。
仲介手数料の上限額は法律によって定められていると説明しましたが、具体的には以下のように決められています。
・売買価格が200万円までの部分:200万円 × 5%
・売買価格が200万円超400万円までの部分:(売買価格 – 200万円)× 4%(※ 売買価格が400万円以上の場合は 200万円 × 4%)
・売買価格が400万円超の部分:(売買価格 – 400万円)× 3%
上記の合計に消費税を加算した額が仲介手数料の上限額となっています。
仲介手数料の上限額はなかなか複雑で理解しにくいものです。そこで売買価格が1000万円の場合を例に挙げて、仲介手数料の上限額の計算過程を示してみます。以下では先ほどの説明に沿って、3つに分けて計算した額を合計して上限額を算出しています。
・売買価格が200万円までの部分:200万円 × 5% = 10万円
・売買価格が200万円超400万円までの部分:200万円 × 4% = 8万円
・売買価格が400万円超の部分:(売買価格 – 400万円)× 3% = 18万円
・(10万円 + 8万円 + 18万円)× 1.08 = 38万8800円(仲介手数料の上限)
不動産を売買する際には様々な価格を想定することがあるでしょうから、いちいち上記のような計算をするのは面倒に感じられるかもしれません。もし売買価格が400万円を超える場合には、次のような速算式を使うこともできます。
・売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
仲介手数料がどのようなもので、その金額がどのように決められているのかということは理解していただけたかと思います。そこで次は、実際に仲介手数料を扱う際に起こりうるトラブルについて解説していきます。あらかじめ法規制や注意点を理解しておくことで、取引の際のトラブルを防げるようにしておきましょう。
先ほど示した式によって算出されるのは、あくまでも仲介手数料の上限額です。必ず仲介手数料をその額にしなければならないというわけではないため、もし上限額を一律で設定されている手数料であると説明されたならば、その説明は誤りです。
ただし上限額を超えない範囲であれば仲介手数料の額は不動産会社が自由に設定することができるので、上限額通りの請求をされることももちろんあります。仲介手数料が一律で定められているわけではないということが、覚えておくべきポイントです。
ちなみに上限額を超える仲介手数料は法令違反となりますので、自分で上限額を把握できるようにしておくと安心でしょう。
「売り出し価格が決まったから仲介手数料を支払ってください」と言われても、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。これは仲介手数料の請求権発生条件に関わる問題です。
仲介手数料はあくまで成功報酬であるため、その請求権が発生するのは売買契約が成立したときとなります。つまりもし売り出し価格が決まった時点で仲介手数料を請求されたとしても、その請求はきちんとした権利のもとになされているものではないということになります。したがって契約が成立するまでは仲介手数料を支払う必要はありません。
仲介手数料とは別に、広告費などを請求された場合、それに応じる必要があるかどうかは状況によって変わります。基本的には、不動産会社は仲介手数料以外に仲介業務で発生した実費を依頼者に請求することはできません。ただし以下の3点をすべて満たす場合にのみ、不動産会社が仲介手数料以外の費用を請求することができるようになります。
1)依頼者の希望で発生した費用(通常は行わない特別な広告など)
2)通常の仲介業務では発生しない費用(依頼者の希望で遠隔地へ出張したなど)
3)実費
これに該当しないにも関わらず、仲介手数料以外の費用を請求された場合には、その請求は正当ではありませんので注意しましょう。
仲介手数料は成功報酬であるため、不動産売買の契約締結と同時に請求権および支払い義務が発生するのですが、それでは実際にはどのタイミングでどのように支払うのかと疑問に感じる方もいるでしょう。ここからは仲介手数料の支払いについて、注意点にも触れながら解説していきます。
売買の契約締結がなされた時点で仲介手数料の請求権と支払い義務は発生しますが、その後にも引渡しまではさまざまな手続きを行う必要があります。もし契約が締結されたときに成功報酬である仲介手数料を全額支払ってしまうと、後に控えている引き渡しまでの諸手続きを不動産会社が適切に行わなくても、仲介手数料を支払った側はどうすることもできないという状況になりかねません。
したがって多くの不動産会社は、仲介手数料の支払いを契約締結時と引渡し完了時の2回に分けて請求するようにしています。例えば、契約が結ばれたときに仲介手数料の半額を支払い、引渡しが完了したときに残りの額を支払うというような形をとったりします。
不動産会社に不動産売却を依頼するときには、不動産会社と媒介契約というものを結ぶことになります。
この媒介契約書には、もし売買契約の締結後に何かしらの理由でその契約が解除された場合には仲介手数料をどうするか、といった内容が含まれています。そしてその取り決めが不動産会社にとって有利な内容になることを防ぐために国土交通省が定めたのが「標準媒介契約約款」というものです。
この「標準媒介契約約款」を用いていない不動産会社は、会社側に有利な取り決めを契約書に含ませている可能性があります。その取り決めの内容によっては、仲介手数料の扱いに関するトラブルが発生しかねません。
不動産会社と媒介契約を結ぶ際には、その不動産会社が「標準媒介契約約款」を使用しているかどうかということに注意する必要があります。
マンションなどの不動産を売却するためには様々な費用がかかりますが、その中でも仲介手数料は最も金額が高く、負担になりやすいものです。ここからはそんな仲介手数料をできるだけお得にする方法について解説していきましょう。
仲介手数料は上限額を超えない範囲において、不動産会社が自由に設定できるものです。ですから中には他社よりも仲介手数料を低く設定し、それを自社の強みとして掲げている会社があります。こうした不動産会社と契約をすることには、大きな負担となりやすい仲介手数料を安く抑えることができるというメリットがあります。
ただし一方でデメリットもあります。まず、そのような仲介手数料を安く設定している不動産会社が多くないため、契約を結ぶ会社の選択肢がかなり減ってしまうということです。
不動産会社はそれぞれサービスの内容が質が異なるため自分に合った会社と契約したいところですが、その選択肢が減ってしまうのは痛手といえるでしょう。また仲介手数料を抑えている分、どこかしらでサービスの質が低下しているということも考えられます。ですから一概に仲介手数料が安い不動産会社が良いとは言えませんが、ひとつの方法として考慮してみてもよいでしょう。
不動産会社と結ぶ媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」という3種類があります。
このうち「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」は仲介を1社のみに依頼する形態をとるため、媒介契約を不動産会社にとっては利益を生みやすく、「一般媒介契約」よりも望ましいものです。で
すから「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」を結ぶことを条件として、仲介手数料の値引き交渉をしてみると仲介手数料を安く抑えることができる場合があります。もちろんこうした値引き交渉をするためには、自分がそれぞれの契約についてある程度理解しておく必要がありますから、交渉する前にはそれなりに勉強しておきましょう。
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仲介手数料は不動産会社の仲介業務に支払う「成功報酬」
仲介手数料は、不動産会社の営業活動によって売買契約の締結がなされたことに対する成功報酬であるため、売主も支払う必要があるものです。金額の上限や条件などは宅地建物取引業法によって定められてはいますが、トラブルが起きることもあります。
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