作成日:2019/07/23
マンション購入にあたり、毎月の管理費がネックと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たしかに管理費は負担の大きいものでもありますが、マンションの適切な管理には欠かせないものでもあります。このコラムでは、管理費がどのように使わているかの内訳や、平均額がどの程度かわかる相場についてお伝えし、適切な管理費の見極め方をお伝えします。
そもそも、マンションの管理費とはどのようなものなのでしょうか?
マンションの管理費は、その名の通りマンションを管理するためのものです。マンションは戸数分の人達の暮らす共同住宅です。
自分の部屋は自分で管理するとしても、廊下や玄関ロビーなど共用部分は誰かに管理してもらわなければなりません。そうした共用部分の管理のために管理会社と契約を結び、管理を行ってもらう代わりに管理費を支払っているのです。
なお、具体的な管理業務としては以下のようなものがあります。
マンションによってエレベーターや会議室、中にはジムなどが共用施設として用意されている場合がありますが、そうした共用施設が多ければ多い程管理費は高くなる傾向にあります。
管理費は毎月支払っていく必要があります。マンション購入時には住宅ローンを組む方が多いかと思いますが、ローン返済額だけでなく管理費の支払いも念頭において資金計画を立てることが大切です。また、マンションを購入すると、ローン返済や管理以外に修繕積立金や固定資産税も支払わなければなりません。
マンションを購入すると、管理費以外に修繕積立金を支払う必要があります。修繕積立金とは、将来の修繕のために費用を積み立てるもので、支払った積立金は管理組合の口座にプールされ、大規模修繕などの際に使われるものです。
修繕積立金は、修繕のための積立金のため、より多額の修繕費用が必要になりそうな場合、途中で値上がりすることがあります。さらに、突発的な工事で費用が足りなくなった時は臨時でお金を支払わなければならないことも発生します。
また、築年数が経てば修繕費用が高くなることを見越して、長期修繕計画において築年数〇年以降は〇〇円といった具合に、築年数が経つごとに修繕積立金が高くなる仕組みとなっているのが一般的です。なお、修繕積立金も管理費と同様、毎月支払う必要があります。
固定資産税は不動産の所有者に対して課される税金で、マンションについても例外ではありません。
マンションが「市街化区域内」にある場合は、固定資産税に加えて都市計画税を支払う必要があります。固定資産税や都市計画税は管理費や修繕積立金のように「毎月支払うもの」ではなく、年に1回、4期分にわけた納付書が送られてきて、それぞれの期日までに納付する必要のあるものです。
支払うタイミングは異なりますが、必ず毎年納付する必要のあるものなので、資金計画を考える時は管理費や修繕積立金と同様に計画に入れておくとよいでしょう。
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ところで、マンション管理費の相場はどのくらいなのでしょうか。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、「完成年次別」と「総戸数規模別」に平均額が集計されており、その結果は以下のようになります。
※出典:国土交通省
なお、全体の平均は15,956円/月です。
管理費は値上がりする?
修繕積立金は修繕費用の積み立てという仕組み上、修繕により高いお金が見込まれる状況では値上がりすることをお伝えしました。そう考えると、管理費は単に管理してもらうための費用なので、値上がりすることはないのでしょうか?
この点、管理費は単に築年数が経過するだけでは値上がりしませんが、たとえば加入している保険の保険料が値上がりしたような場合には値上がりすることがあります。
ここまでの説明を見てみると、修繕積立金は支払ったお金がプールされて将来の修繕に使われるものの、管理費はただ管理会社に支払うだけのもので、「支払うだけ損なもの」だと感じられるかもしれません。
しかし、管理会社に管理費を支払っていることで、共用部分が適切な状況に保たれているのです。
そう考えると、管理費も修繕積立金と同様、必要なものだと言えるでしょう。なお、管理費を支払っているのにも関わらず、管理会社がしっかり管理しておらず、共用部分が汚くなっているような場合には、管理組合を通して管理会社に働きかけるか、場合によっては管理会社の変更を提案するなどすべきだと言えます。
管理費の相場はおおよそ16,000円程度であることがわかりましたが、これに加えて修繕積立金や固定資産税の負担も加わるとなると高いと感じる方も多いでしょう。どうにかして管理費を安く抑えることはできないのでしょうか?
現在、多くのマンションが管理業務を管理会社に委託しています。
このように、管理会社に管理を委託しているマンションでは、入居者が支払った管理費のうちの多くが「業務委託費」として管理会社に支払われています。マンション購入時には、この業務委託費に着目してみましょう。
具体的には、支払った業務委託費に対して、「妥当なサービスが提供されているか」、また「提供されているサービスの中に不要なものはないか」を確認します。たとえば、「管理員常駐」だと管理費が高くなる傾向にあるため、「日勤(毎日通う」」や「巡回(週に何回か通う)」に変更すると管理費を安くできるはずです。
また、マンションにプールがあると豪華なマンションのように感じますが、実際にどのくらい利用するのでしょうか。プールの維持管理にはかなりの費用がかかるため、使っていないようであれば思いきって廃止してしまうのも一つの方法です。
ただ、これらのことを実行するには、購入してから管理組合を通して提案し、入居者の賛同を得る必要がある点に注意が必要です。できれば、購入時点で納得感のある管理費を設定しているマンションを選んだほうがよいでしょう。
マンションの管理内容を見て、管理内容に不満がないようであれば、同じ管理内容でもっと安く請けてくれる管理会社がないか見積もりを取ってみると管理費の削減につながるかもしれません。
他の管理会社で安く請けてくれる可能性があれば、管理組合を通して他の入居者の賛同を得られないか話をしてみるとよいでしょう。他の入居者にとっても、管理費が安くなるのであれば悪い話ではありません。
または、「他の管理会社はもっと安く請けてくれる」ことを交渉材料に、今の管理会社に値引き交渉を持ち掛けてみるのも一つの方法です。もちろん、金額だけでははかれない信頼もあることには要注意です。
マンションの管理費は、規模やタイプによっておおよその相場感があります。
たとえば、先述の国土交通省のデータを見てもわかる通り、規模数が20戸以下のマンションでは管理費が高くなっています。これは、管理戸数が少ないマンションだとエレベーターの整備、点検などの費用を支払うための1戸あたりの負担額が大きくなってしまうことが原因です。
一方、管理戸数の多いマンションが割安になるかというとそうでもなく、戸数の多いマンションはさまざまな共用施設が設置されていることが多く、その共用施設の管理費用のために他の管理戸数のものと同程度になっています。こうしたマンションでは、共用施設の廃止などを提案することで管理費用を安く抑えられる可能性があります(ただし、戸数が多い分、入居者の賛同を得るのは大変です)。
一般的に、販売価格の高いマンション程管理費が高くなる傾向にあります。これは、販売価格の高いマンションほど共用施設が充実しているマンションが多いためです。充実した共用施設は、マンションのグレードやステータスにもなるものですが、実際には共用施設を活用していないということも多いようです。
また、同じ理由でいわゆるタワーマンションの管理費は一般的なマンションより高く設定されています。タワーマンションにはコンシェルジュやゲストルーム、パーティルーム、中には展望台やスカイラウンジなどあるものもあります。たしかに豪華な共用施設は魅力的ですが、本当に必要なものなのか冷静に考えて購入するかどうかの判断をしてください。
ここでは、マンションの管理費における注意点をお伝えします。
まず、管理費の高いマンションは将来売却しづらくなる傾向がある、ということを覚えておきましょう。管理費や修繕積立金は、ローン返済額以外にプラスの負担となるものです。
特に修繕積立金は築年数を経て古くなると負担額が大きくなってしまいます。
築年数が古くなり、物件の魅力は落ちているのに管理費も修繕積立金も高いマンションはそれに見合うだけの付加価値がないと、売却時に苦労することになります。
マンションの管理費や修繕積立金は入居者全員で支払っていくものですが、意外と滞納者が多いことをご存知でしょうか?
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、「管理費・修繕積立金の滞納(3カ月以上)」者があると答えたマンションはなんと全体の24.8%!実に4つに1つのマンションが滞納者を抱えていることになります。
気を付けておきたいのが、売主が管理費や修繕積立金を滞納している場合です。
区分所有法によると、滞納金がある場合、新しい所有者(買主)にも請求できるようになっています。もちろん、売主が管理費を滞納していることを黙って売買契約したのであれば、損害賠償請求できますが、そもそもお金に困っている状況では、損害賠償請求したとしてもお金を回収できない可能性があります。
購入前に、売主が管理費や修繕積立金の滞納をしていないかはよく確認しておくようにしましょう。
マンションの所有者が亡くなり、管理費や修繕積立金が滞納されていた場合、どうなるのでしょうか?
この場合、マンションを相続した人が管理費や修繕積立金の滞納分も支払います。もちろん、法定相続人に該当する場合でも相続放棄すれば滞納分を支払う必要はありません。管理費を滞納するくらいですから、お金に困っていた可能性が高いでしょう。
他の財産状況も見ながら、トータルでマイナスの財産が多いようであれば相続放棄の手続きを取ることをおすすめします。
最後に、実際にマンションを想定して、管理費以外に修繕積立金、ローン返済額の合計額がどのくらいになるのかシミュレーションしてみたいと思います。なお、管理費と修繕積立金については「平成30年度マンション総合調査」の数値を、ローン返済額については金利1%、借入期間35年で満額借り入れた場合の返済額を参照します。
まずは物件価格2,000万円、総戸数30戸、築30年のマンションにおける月額負担額をシミュレーションしていきます
「平成30年度マンション総合調査」によると、総戸数30戸の場合の管理費の平均は16,997円/月、築30年の物件の修繕積立金の平均は12,760円/月となっています。
また、2,000万円を金利1%、借入期間35年で満額借り入れた場合の毎月返済額は56,457円です。これらを合計すると以下のようになります。
次に、物件価格5,000万円、総戸数100戸、築15年のマンションにおける月額負担額をシミュレーションしていきます。
「平成30年度マンション総合調査」によると、総戸数100戸の場合の管理費の平均は16,455円/月、築15年の物件の修繕積立金の平均は12,649円/月となっています。
また、5,000万円を金利1%、借入期間35年で満額借り入れた場合の毎月返済額は141,142円です。これらを合計すると以下のようになります。
最後に物件価格7,000万円、総戸数500戸、築7年のマンションにおける月額負担額をシミュレーションしていきます。
「平成30年度マンション総合調査」によると、総戸数500戸の場合の管理費の平均は17,703円/月、築7年の物件の修繕積立金の平均は9,846円/月となっています。
また、7,000万円を金利1%、借入期間35年で満額借り入れた場合の毎月返済額は197,599円です。これらを合計すると以下のようになります。
このように、ローン返済額以外に管理費や修繕積立金がかかることを想定して資金計画を立てましょう。また、ここでは触れていませんが上記以外に毎年固定資産税がかかることにも注意が必要です。
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マンション購入時の管理費についてお伝えしました。
管理費は平均で16,000円/月程度となっており、所有する限りずっと払い続けなければなりません。もちろん、物件の維持管理のためには必要な経費ではあるのですが、あまり高額に設定されていると不満を感じますよね。
マンションによっては、管理費の中に不要な項目が含まれていることもあるため、管理費が高額に感じる場合には管理項目の削減や管理会社自体の変更も検討するとよいでしょう。
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