作成日:2019/07/22
「そろそろマンションを購入しようと思うけど、自分の年収だと一体いくらまで購入できるのかな?」
これは、マンション購入を考え始めた方の多くが最初に抱く疑問でしょう。たとえば「物件の購入価格は年収の5倍から7倍が目安」などと言われますが、実際はどうなのでしょうか。
このコラムでは、10年以上の不動産仲介業でのキャリアをもつ弊社アドバイザー川内野からのインタビューをもとに、年収ごとに購入可能額をシミュレーションしつつ、また頭金や住宅金利などの分かりにくいポイントもやさしく解説します。
また、誰でも購入価格をイメージできる年収シミュレーターも紹介しているので、マンション売買をご検討の方はぜひ参考にしてみてくださいね。「記事を読むのが面倒くさい…!」という方は、今回答えてもらった不動産アドバイザーに直接相談することも可能です。お気軽にお問い合わせください。
川内野「頭金をいくら準備できるかにもよりますが、近年は低金利のおかげで最大で年収のおよそ8倍まで借りられることもあります。」
マンション購入額を決定する要素として重要なのは、銀行や金利の種類、頭金(自己資金)、中古or新築、年収などの属性、年収におけるローンの返済です。それぞれ後ほど詳しく説明するので、ここでは「年収別で購入可能なマンション価格」の目安を見てみましょう。算出条件は、以下のとおりです。
・ローン返済割合:年収30%
・頭金(自己資金):300万円
・ローン種別::変動金利 35年ローン
また、購入できる物件価格は住宅ローン金利によって変わるため、ここでは変動金利=0.475%の場合と、固定金利=1.26%の場合から、購入可能なマンション価格を算出しました。
・購入可能なマンション価格:1979万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:1742万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>
・新築マンション:京王線「分倍河原」徒歩11分、1LDK
・中古マンション:東京メトロ千代田線「北千住」徒歩20分、築40年、2LDK
・購入可能なマンション価格:2946万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:2591万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>
・新築マンション:JR山手線「大塚」徒歩5分、1K
・中古マンション: 京王線「京王八王子」徒歩1分、築35年、4DK
・購入可能なマンション価格:3914万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:3440万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>
・新築マンション:東京メトロ半蔵門線「押上」徒歩9分、1DK
・中古マンション:JR山手線「駒込」徒歩4分、築15年、1DK
・購入可能なマンション価格:4881万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:4288万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>
・新築マンション:小田急小田原線「千歳船橋」徒歩10分、3LDK
・中古マンション:JR京浜東北線「赤羽」徒歩5分、築20年、3LDK
・購入可能なマンション価格:5849万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:5173万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>
・新築マンション:JR山手線「巣鴨」徒歩8分、2LDK
・中古マンション:東京メトロ日比谷線「中目黒」徒歩11分、築30年、2LDK
・購入可能なマンション価格:8751万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:7684万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>
・新築マンション:東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」徒歩11分、3LDK
・中古マンション:東京メトロ有楽町線「豊洲」徒歩6分、築10年、2LDK
・購入可能なマンション価格:1億8426万円(変動金利0.475%)
・購入可能なマンション価格:1億6173万円(固定金利1.26%)
<この価格帯で購入できるマンションの一例>として、
・新築マンション:JR山手線「目白」徒歩10分、3LDK
・中古マンション:東京メトロ南北線「六本木一丁目」徒歩7分、築5年、3LDK
これらの金額は、マンションの頭金やローン金利のほか、月々の管理費などのランニングコスト、購入時に支払う仲介手数料などの諸経費によっても変わってきます。
概算でいくらのローンを組めるか知りたい場合には、住宅ローンシミュレーターに「年収」「理想の月々の住宅費」「自己資金」を入力するだけで購入可能な物件価格がわかります。また金利変更による物件価格の変更を知りたい場合は、「借入100万円あたりの月々返済額_早見表」を参照し、「借入100万あたりの月々返済額」を変更すれば確認できます。
※ローンシミュレーターはファイルをコピーした上でご利用ください。
川内野「借りられるだけ借りると、年収の40%近くが住宅費になってしまうこともあるので慎重に考えましょう。うかつに借りるのはとても危険です。」
最大限借りることができる金額を「借入可能額」といいますが、「借入可能額」と「実際にかけられる住宅費」は異なります。借入可能額のみに基づいてローンを組んでしまうと、予期せぬ出費で返済に困ってしまうリスクがあるため、注意が必要です。
例えば、購入したマンションの修繕積立費や管理費などのランニングコストに圧迫されてしまうケースがあります。
年収480万円、月収40万円で毎月のローン返済額が30%の12万円の場合を考えてみましょう。仮に諸々のランニングコストが合計3万円かかかると、毎月の住宅費は15万円となり、生活費の37.5%を占めることになります。これではゆとりのある生活を送ることは厳しいでしょう。
これからどのくらいの年収を稼いでいくのかを想像しつつ、長期にわたって無理なくローンを支払い続けられるよう十分に考えねばなりません。もちろん、消費税や社会保障料が上がったり、物価が変化すればローン返済の負担に影響を与えますが、これらをすべて予測することは誰にもできません。ですので、返済額が最大でも将来にわたっての年収の25%〜30%になるようにローンを組むと安心でしょう。
実際の例だと、20代〜30代の方は将来の年収アップを見込んで目一杯借り、一方で40代〜50代の方は頭金を多めに支払うことで将来の負担を抑えようとされる方が多いです。
また将来の年収を想像するだけでなく、稼いだお金を将来何に使っていくのか、考慮する必要があります。たとえば家族旅行をしたい方、おいしいレストランでの食事にお金をかけたい方、子どもの教育に力を入れたい方など、お金の使い道は人それぞれです。「ローン返済の影響で趣味を楽しめなくなった…」なんて事態を避けるためにも、借入可能額のギリギリまで借りないよう、注意しておきましょう。
費用に迷った場合には、「お金のプロ」であるファイナンシャルプランナーに相談してみるのも一手です。住まいの個別相談会にお越しの方には、実績を持ったファイナンシャルプランナーの紹介もしているので、お気軽にご利用ください。
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川内野「購入額は主に5つの要素で決まります。銀行、金利の種類、頭金(自己資金)、中古or新築、属性(所属組織、年数、年収)です。ひとつずつ説明していきます。」
住宅ローンを取り扱う金融機関は無数にありますが、その種類によってローンの条件が異なります。都市銀行や信用金庫とネット銀行それぞれの特徴を簡単に説明します。
・都市銀行や信用金庫
対面での相談窓口が用意されているため、家族構成や世帯年収に合った資金計画を相談したり、希望のローンが叶わない場合でも異なるパターンの提案をしてもらえたり、柔軟にやり取りできることがメリットです。ローンの相談から融資実行まで担当者が一貫して対応してくれたり、融資実行までのスピードがネット銀行に比べて早いのも特徴です。その分、ネット銀行よりは金利は高いです。ローンの手続きに不安があり、担当者と相談しつつ進めたい方におすすめです。
・ネット銀行
ほかの金融機関に比べて低金利なのがメリットです。そのため、やり取りは対面ではなくすべてインターネットと電話経由で進めます。審査のための面談もありません。また申込みのために、300万円〜400万円の年収基準があるなど審査が厳しいという特徴があります。書類の準備など自分で進めることになるので、そういったことに抵抗がなく、オンラインでのやり取りに不安を感じない場合はネット銀行で申し込むとよいでしょう。
マンションを購入するときの金利には大きく分けて「変動金利」と「固定金利」があります。それぞれのメリットとデメリットはこちらです。
変動金利
・メリット:固定金利よりも一般的に低く設定されている
・デメリット:金利上昇のリスクを受けることがある
固定金利
・メリット:金利上昇のリスクを受けない
・デメリット:金利上昇が無ければ、支払い過ぎるリスクがある
2018年度の調査では、「変動金利」と「固定金利」はおよそ6:4の割合で選ばれています。 (参考:住宅金融支援機構『2018年度民間住宅ローン利用者の実態調査』 )
「変動金利」では返済期間中に定期的に金利が見直されますが、「固定金利」では、ローンを借りたタイミングから一定期間の金利を固定することができます。さらに「固定金利」は「固定金利期間選択型」と「全期間固定金利型」に分かれ、フラット35は「全期間固定金利型」の代表例です。
「変動金利」は市場金利の変動リスクを受けるため、収支計画が立てにくく、支払額が増える可能性もありますが、「固定金利」よりも適用金利が低く設定されています。「固定金利」は「変動金利」よりも高かったとしても、将来の金利上昇に肝を冷やす必要はありません。現在のように低金利の状況下では、今後の金利上昇もあり得ると考えて「固定金利」を選ぶのが得策だという主張も少なくありません。
マンション購入価格の20%は頭金を準備しましょうという意見もありますが、一体いくらが適切なのでしょう?
同じマンションを購入するなら、頭金が多いほど毎月のローン支払い額は少なくなります。また同じ月返済額の場合、頭金が多いほど購入できるマンション価格は高まります。マンションの購入にあたって両親から援助をしてもらうケースも少なくなく、頭金を増やすことには大きなメリットがあります。
しかし自己資金のみの場合、目一杯のお金を頭金にあててしまえば手元の現金を失います。これでは、病気や転職で失職したときなど、不測の事態に対応できない…なんてことも。また、育児中の家庭では子どもの教育費なども準備しておく必要があります。そのため、現在の生活費の半年から1年分を生活予備費として確保してから、余ったお金で頭金を支払うとよいでしょう。あるいは現在の低金利の状況では、頭金の支払いをなるべく少なくして手元の現金を投資などに活用するという選択肢もあります。
「一生に一度の購入だから誰も使っていないキレイな新築マンションに住みたい」
「新築マンションの方が修繕費やメンテナンス費用が安い」
「中古マンションの方が安いし、住めば都」
「中古マンションは供給が多いので選びやすい」
など様々な意見がありますが、誰も他人の住んだことのない新築マンションへの強いこだわりがある場合を除いては、中古マンションを購入するのが良いのではないでしょうか。
新築マンションのメリットは当然ながら新品であることですが、販促活動にかかった広告費と人件費が価格に上乗せされるため、同じスペックの中古マンションに比べ割高になります。
一方で中古マンションのデメリットは設備の老朽化のリスクがあることですが、仮に築20年の中古マンションだとしても新耐震基準を満たしており、エレベーターやオートロックなどの設備があり、管理も行き届いている物件もそう珍しくはありません。またリノベーションをすれば新築マンションに遜色のないオシャレな見た目へと変えることもできます。リノベーション費用は700〜1000万円の場合が多いですね。
ここで、年収(総支給額)500万円、3500万円のマンションを購入するパターンを一例として見てみましょう。新築であればこのようなマンションがあります。
・東京メトロ半蔵門線「押上」徒歩9分、1DK、約30平方メートル
同じようなマンションを中古で探すと、築浅で、より広いマンションですら、先程のマンションより15%も安い2980万円で購入できることがわかります。
・東京メトロ半蔵門線「押上」徒歩16分、築8年、1LDK、約40平方メートル
一方、中古で3500万円前後となるとこのようなマンションが購入可能となります。
・JR山手線「駒込」徒歩4分、築15年、1DK、約30平方メートル
あくまで、このコラムを作成した時点(2019/07/20)の調査のため、まだまだ違う条件の物件もあるかと思いますが、築浅で最寄り駅がより充実しているマンションがあることがお分かりいただけると思います。
勤め先や勤続年数などの属性によって、有利なローンを組めるかどうかが変わります。重要視されるのは、勤め先、勤続年数、年収です。
貸主である金融機関は、借り主が会社員や公務員なのかフリーランスなのか会社役員なのか、会社員であればどんな企業で勤続年数や年収はどのくらいか、を注視しています。
審査を通過しないと当然ローンを組むことはできずマンションは購入できません。各項目において安定した返済能力があることを示す必要があります。優遇されるのはどのような属性なのか詳しく見ていきましょう。
・勤め先について
大企業や公務員の正社員や国家資格による士業>一般企業の正社員>非正規社員や自営業者、会社経営者の順に安定した返済ができると見なされます。特に非正規社員や自営業者、会社経営者は審査において不利とされています。非正規社員の場合は頭金を多めに準備したり、正社員以上に長い勤続年数が必要になります。自営業者や会社経営者は事業継続性を示すために、直近3年分の確定申告書や源泉徴収票の提出が必要となります。
・勤続年数について
「3年以上」の勤続年数があればほとんどのケースで安定した返済能力があると見なされますし、「1年以上」でもクリアすることが少なくありません。またそれより短い年数だとしても、スキルアップが見込まれる同業種への転職などであればポジティブに評価されることもあります。
・年収について
融資を実行するかどうかの基準としての年収は実はそれほど高くありません。安定した返済能力があると判断されさえすれば、100万円〜150万円以上の年収で審査を通過できることが多いです。これは、年収が融資の可否ではなく「融資可能額」を決める材料として使われているからです。
川内野「金融機関に事前審査をすることです!実際にいくら借りることができるかを知りたいときは、銀行やローン会社などの金融機関に依頼することになります。」
準備するものは、下記が一般的です。
「こんなに用意しないといけないなんて、面倒くさい…」と思われる方には、最短1分で審査結果がわかるARUHIのクイック『家探し前クイック事前審査』をおすすめします。実際に、弊社内で試したときは5~8分ほどで審査結果がわかりました。
川内野「健康状態等に問題がなければ、基本的に40歳までは35年ローンを組めるので価格は変わりません。」
同じ年収の場合、早くローンを組む方が長期間のローンを組めるため、マンション購入可能額は大きくなります。大体どの金融機関も、75歳までを最大としてローンの年数を決定するため、40歳までは35年ローンを組める計算となります。
年齢が高めの方は組めるローンが限られてしまうので、35年ローンを組みたければ、40歳までに購入する必要があります。それ以降はローンを組める年数が縮まるため、借りられる額が少なくなります。
川内野「ペアローンというものがあり、二人の年収を合算してローンを組むことができます。」
例えば、夫の年収が400万円、妻の年収が300万円の場合、年収700万円としてローンを組むことができます。ペアローンの最大のメリットは、まだ年収の少ない若い世代でも比較的容易にマンションを購入できることです。
ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを借りるという形態になるので、それぞれのローンに対して夫婦それぞれが債務を負い、お互いがお互いのローンの連帯保証人になります。住宅ローン控除が夫婦それぞれに適用される一方、事務手数料や登記手数料も夫婦それぞれに適用されます。購入したマンションは共有名義となり、持分はそれぞれの負担額に応じて配分されます。
ペアローンを使えば単身では手の届かないマンションを購入できますが、万が一どちらかが支払いできなくなってしまった場合、1人に負担が集中することになります。身の丈以上のリスクを背負わないためには、パートナーのキャリアを二人で慎重に考えたり、年収に対しての支払い比率を低めに抑えるなどの細心の工夫が必要といえるでしょう。
マンション売却・購入のお悩みを【無料】で相談:不動産アドバイザーサービス
現在の年収から計算されたマンションの購入可能額を見てどう感じましたか?
思っていたよりも大きな金額を借りられると驚かれたのではないでしょうか。共働きでペアローンを組む方なら、購入可能額はさらに大きくなるはずです。
マンションの購入を決められたら、まずは住宅ローンの事前審査をしてみましょう。その結果によって、身の丈にあったマンション購入がぐっと現実味を帯びてきます。
そしてぜひ、将来のライフプランを一度しっかりと考えてみてください。自分、あるいは家族と、どのような時間を過ごして幸せを築いていきたいのか。そのために、いくらの、どのようなマンションを購入すべきかを考えることが最も大切です。
そして不動産会社や金融機関は、あなたがマンションを「購入できるかどうか」は教えてくれますが、「購入すべきかどうか」は教えてくれません。失敗しないマンション購入のために大事なことは、フラットな立場の信頼できる専門家に相談することです。
「周りに信頼できる専門家なんていない…」という方は、専門家に無料で相談できる『住まいのミカタ』の個別相談会をぜひご利用ください。業界経験10年以上のプロの不動産アドバイザーが、中立的な立場からご状況をヒアリングし、「マンション購入のコツ」をアドバイスさせていただきます。