作成日:2019/07/16
マンションの売却時にかかる費用の中で最も大きいものが、不動産業者に支払う仲介手数料です。最初に仲介手数料の金額や支払い時期について解説します。
マンションを売却する場合は不動産業者に依頼するのが一般的な方法です。仲介手数料とは不動産業者に対して支払う成功報酬のことです。不動産を売却するためには、物件情報サイトへの掲載、チラシ作成、内見(不動産の内部見学)の立会いといった売却活動が必要になります。不動産業者は売主に代わって売却活動や売買契約の手続きをおこない、売主はマンションの売却に成功した際にその手数料を支払うことになります。
仲介手数料には通常の仲介作業で発生する費用が含まれています。後から売主に追加請求が来ることはありません。ただし、特別な業務を依頼する場合には別途手数料を支払う必要があります。たとえば、遠隔地への出張や特殊な広告や宣伝などは通常業務に含まれないために追加費用が発生します。追加費用は実費(実際にかかった費用)で請求することと規定されていますが、特別な依頼をするときには事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
仲介手数料は不動産業者が自由に決められますが、上限は宅地建物取引業法で定められています。仲介手数料の上限は売買価格の範囲によって、以下のような料率(3%~5%以内)が設定されています。
・売買価格200万円以下の部分:売買価格の5%以内
・売買価格200万円超~400万円以下の部分:売買価格の4%以内
・買価格400万円超の部分:売買価格の3%以内
マンションの売買価格は400万円を超える場合がほとんどでしょう。仲介手数料の上限は、200万円以下の部分、200万円超~400万円の部分、400万円を超える部分で料率が異なるので、それぞれ計算して合計しなければなりませんが、以下の計算式で手数料の上限を簡単に求めることができます。
・仲介手数料の上限=売買価格×3%+6万円+消費税
具体的な仲介手数料の例を挙げると、以下のような金額になります(消費税8%で計算)。
<売買価格が2000万円の場合>
仲介手数料 = (2000万円×3%+6万円) × 1.08 (消費税分をプラス) = 71万2800円
<売買価格が3000万円の場合>
仲介手数料 = (3000万円×3%+6万円) × 1.08 (消費税分をプラス) = 103万6800円
<売買価格が4000万円の場合>
仲介手数料 = (4000万円×3%+6万円) × 1.08 (消費税分をプラス) = 136万800円
不動産業者が上限を超える仲介手数料を受け取るのは違法です。なお、あくまでも上記で示した金額は上限額なので、仲介手数料が半額だったり無料だったりということもあります。
仲介手数料はマンションの売買契約が成立した後で支払います。売買契約が成立するまでは支払う必要はありません。支払いのタイミングには以下の3つのパターンに分けられます。
・売買契約成立時に全額を支払う
・売買契約成立時と物件引き渡し時に分割して支払う
・物件引き渡し時に一括で支払う
売買契約が成立した時点で仲介手数料の請求権が発生するので、売買契約成立時に全額を支払うという取り決めをすることも可能です。しかし、この時点では実際には物件の引き渡しが済んでいないため、売買契約時に半額だけを支払い、物件の引き渡し時に残りの半額を支払うというのが一般的となっています。
仲介手数料の支払い時期がいずれのパターンになるのかは媒介契約(不動産業者にマンションの売却を依頼するときの契約)で取り決められます。不明な場合は事前に不動産業者に確認しておくことが必要です。
【無料】少しでも高く売る重要なコツとは?マンション売却のお悩みをプロに相談!
中古マンションの売却時には不動産業者に支払う仲介手数料以外にも、さまざまな費用が必要になります。支払うタイミング別にすぐに必要となる費用と、人によっては必要となる費用に分けて解説します。
すぐに必要となる費用には、印紙税、登記費用、一括繰上返済に関する費用が挙げられます。マンションの売却を決意したら、あらかじめ準備しておきたい費用です。以下にそれぞれ詳しく説明します。
マンションの売買契約書を作成するときに印紙税が必要となります。印紙税とは印紙税法で決められた課税文書に対して課税される税金です。要するに売買契約書などを作るときに課せられる税金のことです。印紙税は売買価格により規定額の印紙を売買契約書に貼り、消印(割印)を押すことで納付が完了します。印紙税は契約書1通ごとに必要になります。通常は契約書を2通作成し、印紙税は売主と買主それぞれが1通分ずつ負担することになります。不動産売買契約書の印紙税額は、売買価格によって以下のように規定されています。
<不動産売買契約書の印紙税>
※2020年3月31日までに作成された契約書の場合
・10万円以下:200円(1万円未満は非課税)
・10万円超~50万円以下:200円
・50万円超~100万円以下:500円
・100万円超~500万円以下:1000円
・500万円超~1000万円以下:5000円
・1000万円超~5000万円以下:1万円
・5000万円超~1億円以下:3万円
・1億円超~5億円以下:6万円
・5億円超~10億円以下:16万円
・10億円超~50億円以下:32万円
・50億円超~:48万円
マンションを売却するときには不動産の所有権が売主から買主へ移転します。そのため、所有権移転登記が必要となりますが、その登記費用は買主が負担します。売主が負担するのは抵当権抹消登記の費用です。住宅ローンが残っているマンションを売却する際に必要となります。住宅ローンが完済していない物件には抵当権が設定されているはずです。不動産の所有者が変わっても抵当権は変わらないので、そのままでは売却するのは困難です。売却するためには、住宅ローンの残額を完済して、抵当権を抹消することが必要になるのです。
抵当権抹消登記の手続きには、抵当権抹消登記申請書(1通1000円)の代金と、登録免許税(1物件1000円)がかかります。個人で申請することも可能ですが手間がかかるので、司法書士に依頼するのが一般的でしょう。司法書士に依頼する場合の費用は2~3万円程度が目安です。
住宅ローンが残っているマンションを売却するためには、残額を一括繰上返済して抵当権を抹消しなければなりません。そのための費用と手数料も必要になります。住宅ローンでは物件を担保にして金融機関にお金を借りているので、マンションの売却代金でローンの残りを完済できる場合は、その金融機関に売却代金からローンの残額を一括返済するように届け出をおこないます。売却代金がローンの残額よりも少ない場合は、自己資金で補うか、別のローンや融資を利用して一括返済する必要があります。
住宅ローンを一括返済する場合は、別途手数料(5000円~2万円前後)もかかります。具体的な金額については金融機関や手続き方法によって異なりますので、利用中の金融機関に確認が必要です。
人によっては必要となる費用には、引越し費用とリフォーム・クリーニング費用が挙げられます。
現在住んでいる自宅マンションを売却する場合は、新居への引越し費用がかかります。具体的な引越し費用は荷物の量やシーズンによって異なってきます。引越し荷物が多い人、移動距離が長い人、繁忙期(3~4月)に引越しする場合は費用は高くなりがちです。引越し費用を抑えたいなら複数の引越し業者に見積もりを取るのがおすすめです。引越しのピーク時期を外して引越したり、時間帯指定を外したりすると安くなる可能性が高くなります。
なお、旧居の退去日と新居の入居日のタイミングが合わないときに、一時的に仮住まいへ引越しするケースがあります。この場合、旧居→仮住まい、仮住まい→新居と2回の引越しが必要となり、費用も2倍かかってしまいますのでご注意ください。引越し先が賃貸物件の場合は、敷金・礼金も必要になります。
古いマンションを売却する場合などは、買い手を見つけるために内装のリフォームやクリーニングが必要になることがあります。ハウスクリーニングだけなら10~15万円ぐらいで済みますが、リフォームをすると数百万円もかかってしまうことがあります。特に水回り設備の改修のような大掛かりなリフォームを計画している人はリフォーム費用が高くなりがちです。リフォームやクリーニングをおこなう場合は、不動産業者に仲介してもらうのが一般的ですが、自分で業者を探して依頼したほうが費用が安くなる場合があります。
マンションを売却すると、不動産の売却益に対して所得税や、翌年の住民税が課せられることになります。税金の支払いにかかる費用についても考えておきましょう。
譲渡所得とは、簡単に言うと不動産を売って手元に入ってきた利益のことです。マンションを売却して得た利益は譲渡所得となり、譲渡所得は所得税・住民税の課税対象になります。ただし、売却額=譲渡所得ではありません。マンションを買ったときより、売却したときの価格が安ければ利益にならないので譲渡所得にはなりません。譲渡所得は収入金額(マンションの売却価格)から取得費(マンションの購入価格と購入にかかった費用の合計)と譲渡費用(売却にかかった費用)を差し引いた金額です。計算式で表すと以下のようになります。
・譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
上記の計算式でプラスになった金額が譲渡所得となり、その金額に対して税金が課せられます。反対にマイナスとなった場合は譲渡損失となり税金はかかりません。その他の所得と相殺して所得税や住民税を減らすことができます(損益通算)。さらに、売却した年の所得よりも譲渡損失が大きい場合には、翌年以降の所得からも繰越して相殺することができます(繰越控除)。
たとえば、マンションの取得費が3000万円で、売却価格が4000万円の場合(譲渡費用は150万円とする)、譲渡所得は850万円となります。
・譲渡所得 = 4000万円 - (3000万円 + 150万円) = 850万円
売却価格が2000万円に値下がりした場合(売却費用は100万円とする)、計算結果がマイナスになるので譲渡損失が1100万円になり税金はかかりません。
・譲渡所得 = 2000万円 - (3000万円 + 100万円) = -1100万円
譲渡所得と住民税について、実際に支払わなければいけない税金と、それぞれの税率について解説します。
譲渡所得がある場合には譲渡所得税を支払う義務があります。譲渡所得の金額に対して課せられる税金です。譲渡所得税の税率は所有期間が5年以下(短期譲渡所得:30%)か、5年超(長期譲渡所得:15%)で変わります。さらに、所有期間が10年を超えると、譲渡所得6000万円以下の部分はマイホームの軽減税率の特例を受けられます。この場合の譲渡所得税率は10%となります。その他に、2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されます。
たとえば、譲渡所得が850万円の場合、所有期間によって以下のように所得税が変わります。
・所有期間が5年以下の場合
所得税 = (850万円 × 30%) × 1.021% (復興特別所得税をプラス) = 260万3550円
・所有期間が5年を超える場合
所得税 = (850万円 × 15%) × 1.021% (復興特別所得税をプラス) = 130万1775円
・所有期間が10年を超える場合
所得税 = (850万円 × 10%) × 1.021% (復興特別所得税をプラス) = 86万7850円
不動産の所有期間は「売却した年の1月1日現在でその不動産を所有していた期間」で算出します。納税手続きのためには、サラリーマンであっても確定申告が必要になります。
譲渡所得には譲渡所得税の他に住民税も課せられます。税率は所得税の場合と同様、所有期間が5年以下(短期譲渡所得:9%)か、5年超(長期譲渡所得:5%)で変わります。さらに、住民税も所有期間が10年を超えると、譲渡所得6000万円以下の部分はマイホームの軽減税率の特例を受けられます。この場合の住民税の税率は4%となります。
たとえば、譲渡所得が850万円の場合、所有期間によって以下のように住民税が変わります。
・所有期間が5年以下の場合
住民税 = 850万円 × 9% = 76万5000円
・所有期間が5年を超える場合
所得税 = 850万円 × 5% = 42万5000円
・所有期間が10年を超える場合
所得税 = 850万円 × 4% = 34万円
なお、所得税の確定申告をすると自動的に住民税も計算して通知を送ってくれるので、別途、申告手続きをする必要はありません。
ここからは、マンション売却時に必要な出費を減らすために知っておくべき知識を解説します。
マンション売却時にかかる費用の中で、最も大きいのが不動産業者に支払う仲介手数料です。しかし、出費を節約したいからといって、仲介手数料の安い不動産業者で契約するのが必ずしも良いとは限りません。
仲介手数料は先程も紹介したとおり、不動産業者によって異なります。中には、相場の半額や無料という業者も存在します。安ければ良いとは限らないので注意が必要です。いくら仲介手数料が安くても売却活動の質が悪いと成果が期待できません。逆に上限の仲介手数料を取っていてもサービスが手厚ければ売却成功の確率も高くなります。マンション売却時にはサービスの質も大切なので、仲介手数料の金額だけでなく信頼できる不動産業者を探して契約することが重要です。
マイホーム(自宅マンション)を売った場合は、譲渡所得税に関して特例が利用できる可能性がありますので紹介しておきます。
マイホーム(居住用財産)を売却したときは、不動産の所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3000万円まで控除ができる特例(居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例)があります。つまり、3000万円以内で売れた場合には譲渡所得税がかからないということです。ただし、特例を受けるためには適用要件をすべて満たす必要があります。具体的な要件としては、住まなくなって3年目の年末までに売却する、住宅ローン控除と併用できないなどが挙げられます。また、この特例を受けるためには確定申告が必要となります。
自宅の買い換えで発生した譲渡所得には、課税を先延ばしにできる特例があります。2019年12月31日までに売却した場合が対象となります。自宅を買い換えた際、元の住宅を売却した価格よりも高い価格の家に買い換えると、譲渡所得の課税を次回の売却時まで繰り延べられます(特定の居住用財産の買換えの特例)。
ただし、次に売却したときには繰り延べた分の金額が譲渡所得に加算されて課税されます。なお、売却価格よりも安い価格のマイホームに住み換えた場合は、売った金額と買い換えた金額の差額を収入として扱われ、そこから諸費用を引いたものが譲渡所得となります。また、買換え特例を使うためには、先程紹介した3000万円の控除を受けていないなどの要件を満たす必要があります。
マンションを売却するためにはさまざまな費用が必要になります。売却するなら必要な費用の目安についても考えておきましょう。物件の所有期間や税金の特例を利用することで、所得税や住民税が安くなることもあります。できるだけ高い価格で売却して出費を抑えるためには、やはり、不動産業者選びが大切です。マンションの売却実績が豊富で、信頼できる不動産業者に依頼することが重要なポイントです。